電気エンジニアとは? 資格やスキル、勉強方法を解説

日常生活に欠かせない電気製品の開発や設計を担うのが、電気エンジニアです。この記事では、電気エンジニアとして転職を希望する方に向けて、電気エンジニアが日々どのような仕事を行っているのかを紹介します。また、電気エンジニアになるための勉強方法、必要とされる適性・資格・スキルなどについても解説するので、参考にしてください。

電気エンジニアとは? 資格やスキル、勉強方法を解説

電気エンジニアとは

電気エンジニアとは、電気製品やその製造設備を対象として、設計・開発・制作・修理などを専門に行うエンジニアのことを指します。電気エンジニアの最大の特徴は、電気や電子回路、家電製品の仕組みなどに特化した確かな知識と技術を有することです。

電気エンジニアの需要が高まっている背景

電気エンジニアの需要が高まっている背景には、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末の普及が大きく関わっています。

多くの家電製品がインターネットに接続され、それを離れた場所からモバイル端末を用いて遠隔操作することが、当たり前に行われるようになりました。そして、遠隔操作を可能にするモバイル端末や家電製品などの機器を設計・開発・製造して、私たちの暮らしを支えているのが電気エンジニアです。

また電気エンジニアは、モーターなどの部品をモバイル端末から電気自動車や医療用機器まで、多種多様な機器に組み込むアナログ回路を設計する専門家でもあります。そのため、電気エンジニアは家電メーカーだけでなく、精密機器や自動車などのメーカーにとっても不可欠な存在であり、従業員として確保しなければ製品を生産できなくなってしまうので、その需要は非常に高まっています。

IT・機械・電気エンジニアの違い

世の中には多種多様なエンジニアが存在しますが、なかでもITエンジニア、機械エンジニア、電気エンジニアの3つは互いに混同されがちです。これら3つがどのように違うのかを以下で示します。

ITエンジニアとの違い

コンピュータは本体を含む関連機器だけでは動作せず、コンピュータを動かすためのシステムやソフトウェアがそろわなければ使用できません。

ITエンジニアは情報技術者とも呼ばれ、主にコンピュータのシステムや各種ソフトウェア、サーバ、ネットワーク環境について、開発・設計・構築・運用・保守などを担当します。また、サイバー攻撃を防ぐために、情報セキュリティ対策を専門に行うのもITエンジニアです。

これに対して、電気エンジニアや機械エンジニアは、コンピュータ本体やその周辺機器、コンピュータが組み込まれた機械といったハードウェアを担当します。

市販されている機械にはコンピュータが搭載されていることが多く、機械エンジニアや電気エンジニアが設計・開発したハードウェアに、ITエンジニアが設計・開発したソフトウェアをインストールして動作させるのが一般的です。

機械エンジニアとの違い

機械エンジニアはメカニカルエンジニアとも呼ばれ、機械やプラント設備の設計・開発・製作・設置・運用・保守などを専門に行います。たとえば、ロボットのアームや自動車のエンジンなど、主に機械の仕組みや構造に関わる部分を担当します。

一方、電気エンジニアも機械作りに関わりますが、設計や開発を行うのは主に電子回路が使われる部分です。たとえば、ロボットを設計する場合には、ロボットを動かすためのモーターや光や音などを感知するセンサーの部分を担当します。

電気エンジニアの仕事

電気エンジニアの仕事

電気エンジニアに転職するのであれば、事前にその仕事内容を知っておくべきです。ここでは、電気エンジニアがどのような仕事を行っているのかイメージできるように、その仕事の流れを紹介します。

ヒアリングから設計

電気エンジニアの仕事は、機器のなかでも電気が関わる部分の設計や開発が主要な業務です。この業務を遂行するためには、まずは顧客の要望をよく聞いて、それを設計や開発に反映しなければなりません。

そのため、電気エンジニアは最初に顧客から丁寧にヒアリングを行って要望をしっかりと吸い上げます。そして、顧客の要望を叶えられるように機器の開発計画を立案した後は、その計画に基づいて機器の設計を行い、設計書を作成しなければなりません。

設計から開発

設計が完了したら、作成した設計書に基づいて開発作業を開始します。電気エンジニアは開発現場に常駐し、トラブル発生時には現場にいるさまざまなエンジニアと協力して、できるだけ早くトラブルを解決しなければなりません。同じプロジェクトに参加している他分野のエンジニアとコミュニケーションをとりながら、連携してプロジェクトを成功へと導くことも電気エンジニアの大切な仕事です。

電気エンジニアのやりがい

電気エンジニアに転職するのであれば、自分がその仕事にやりがいを感じられるかどうかは非常に重要なポイントです。ここでは、電気エンジニアが一般的にどのようなやりがいを感じながら仕事をしているのかを紹介します。

自分が関わった製品・サービスが世に出る

電気エンジニアをしていると、自分が手がけた製品やサービスが、身近な場所で実際に使われているのを目にすることがあり、単純に喜びを感じられます。

また、製品やサービスを利用している人々の声を偶然耳にする機会もあり、そこで肯定的な感想を聞けたらとても励みになります。

さらに、IoT機器がより便利な世の中を実現するのを目の当たりにするなかで、その機器を動かす心臓部の電子回路を設計することにより、社会的な貢献度の高さを強く感じられるというのも大きなやりがいです。ここでのIoT機器とは、インターネットに接続して通信を行いながら使用する機器の総称です。

最先端の技術に携われる

第5世代移動通信システム(5G)、人工知能(AI)、車の自動運転、IoTといった最先端技術を機器に取り入れるために欠かせない電子回路やこれらの最先端技術を支える基盤となる通信インフラの仕事に携われます。自分が苦労して開発した電子回路によって、完成した機器が仕様通りの性能を出せたときの達成感は、何ものにもかえがたいやりがいです。

電気エンジニアに向いている人

各職業にはそれぞれ適性があります。どのような人が電気エンジニアに向いているのか、向いている人の特徴を以下に示します。自分が当てはまるかどうかチェックしてみてください。

ここでは5つの項目を紹介しますが、すべてを兼ね備えていなくても構いません。

論理的な思考ができる

電気エンジニアは、論理的思考力に優れていなければ務まりません。論理的思考力はロジカルシンキングとも呼ばれ、物事の因果関係を明らかにして判断の根拠をはっきりと示す力のことです。

電気エンジニアは、仕様通りの動作を達成するにはどのように回路を組めばよいかなどを考える仕事なので、論理的に考えて正解に到達することが求められます。また、設計した回路の動作に問題があり、修正が必要な場合には、具体的にどこをどのように修正するかを論理的に示し、周囲に指示を出さなければなりません。

学び続けることが好き

電気・電子をはじめとする科学技術は、日々進歩し続けています。設計・開発を担当する機器に、最新の技術を取り入れるためには、日ごろから専門誌などに目を通して新しい技術をチェックし、絶えずその内容を吸収する姿勢が不可欠です。プライベートの時間も技術の勉強に充てることになるため、学ぶことが好きな人でなければ多大なストレスがたまって、嫌になってしまうに違いありません。

数学や物理など理系の基礎知識がある

電気エンジニアは、電気工学や電子工学といった工学系の基礎知識を身につけていなければなりません。しかし、工学系の基礎を学ぶ際には、数学と物理学の基礎知識がないと理解できないので、最低でも高卒レベルの数学と物理学の知識を習得しておくことが求められます。

また、回路設計に必要な加工や素材の知識は、化学と結びついているので、数学と物理学以外の理系の知識も持っていれば、仕事を行ううえで役に立つはずです。

地道な作業を続けることに喜びを感じる

電気エンジニアに向いている人

地道な作業を続けることに喜びを感じられることも、電気エンジニアの適性のひとつです。設計図の作成ではミリ単位の誤差も許されず、試作機の製作では実際に自分の手を動かし、小さくて繊細な部品を使用して回路を組みあげなければなりません。

電気エンジニアには日ごろから地道にスキルを磨き、困難なことがあっても途中で投げ出さず、細かい作業をていねいにやり遂げる粘り強さが求められます。

コミュニケーション能力がある

電気エンジニアはひとりで仕事に取り組むのではなく、複数のエンジニアがまとまってチームを組み、互いに協力しながら設計・開発などを進めていきます。プロジェクトによっては、ITエンジニアなど他分野のエンジニアがチームに加わることもあるでしょう。

高い技術力を保有しているエンジニアの集団であっても、各人が個人プレーに走り、周囲との連携が上手にできなければ、全体の作業がスムーズに進まなくなって、プロジェクトが失敗してしまいます。誰とでも円滑にコミュニケーションをはかれる能力は、電気エンジニアにとって必須の能力です。

電気エンジニアに必要なスキルと知識

電気エンジニアになるには、電気工学や電子工学に関する専門的な知識やスキルが必要とされ、特に電気回路図や電気シンボルなどの知識は不可欠です。電気の基礎知識として重要なものをピックアップして以下に示します。

電荷と静電気

電荷とは、電気現象を引き起こすおおもとになるものであり、正電荷と負電荷の2種類があります。物体が持つ正電荷と負電荷のバランスが崩れて、帯電している状態が静電気です。

電圧と電流

電流とは回路内を流れる電気の流量を指し、電圧とは電気を流す力を指す言葉です。

抵抗

電気の流れを邪魔して流れにくくするものが抵抗です。電流をI、電圧をV、抵抗をRで書き表すと、オームの法則により、V=I×Rという式で3つの関係性を表現できます。

直列回路と並列回路

抵抗を直列につないだ直列回路と抵抗を並列につないだ並列回路では、抵抗の値を計算する方法が変わります。直列回路の場合にはつないだ各抵抗を単純に足せば抵抗の値が出ますが、並列回路の場合にはつないだ各抵抗の逆数を足したものが抵抗値の逆数となるので注意しましょう。

交流と直流

回路に電気を流す方法には、交流と直流の2つが存在します。直流は電気を流す向きと電圧を一定にする方法で、交流は電気を流す向きと電圧を交互に周期的に変える方法です。乾電池を電源にする場合は直流となり、電力会社から送電される電気を使う場合は交流となります。

周波数

交流で電気を流す向きと電圧を交互に変えたとき、縦軸に電圧、横軸に時間をとってグラフで表現すると波形が描かれます。1秒間に生じる波の回数が周波数で、1秒間に60回なら西日本の家庭用電源と同じ60Hz(ヘルツ)、50回なら東日本の家庭用電源と同じ50Hzです。

コンデンサ

コンデンサは蓄電と放電を担う電子部品で、電圧の安定やノイズの除去などができる、電気製品に欠かせない部品のひとつです。

コイル

コイルはインダクタとも呼ばれ、電気と磁気を作用させることによって、電流を安定させたり、交流の電圧を変換したりするのに用いられるポピュラーな電子部品です。

半導体(ダイオード・トランジスタ)

電気を通す導体とほぼ通さない絶縁体の中間的存在で、条件によって電気を通すか通さないかを切り替えられるのが半導体です。半導体を用いたダイオードという電子部品を用いるとひとつの方向にだけ電気を流すことができます。また、トランジスタという電子部品を用いると電気信号を増幅したり、電気信号によって回路をON/OFFするスイッチとして利用したりすることが可能です。

電気エンジニアの業務に関連する資格

電気エンジニアとして就職したいのであれば、電気主任技術者、電気工事士、E検などの資格は取得しておいた方が望ましいです。

これらの資格について、ひとつずつ簡単に紹介します。

電気主任技術者

電気設備の保安監督者として活躍できる国家資格が電気主任技術者です。取り扱える事業用電気工作物(発電所、変電所、送配電線路、工場・ビル・住宅等の受電設備、屋内配線、電気使用設備など)の電圧によって、第一種から第三種まで区分されます。第三種は事業用電気工作物の電圧が5万ボルト未満、第二種は事業用電気工作物の電圧が17万ボルト未満、第一種は無制限です。受験資格は特に設けられていませんが、第三種でも合格率がおよそ1割で、難しい試験として知られています。

電気工事士

電気設備の安全を確保して電気工事を行うための国家資格が電気工事士です。住宅などにおいて600ボルト以下で受電する設備を工事できる第二種と最大電力500キロワット未満の工場などで工事ができる第一種の2種類があります。電気工事士は、電気主任技術者よりも易しい試験なので、両方とも取得を目指すのであれば、電気工事士から先に取得するのがおすすめです。

E検定

E検定(電気・電子系技術検定試験)は、電気・電子系エンジニアの短期育成を目的とし、エレクトロニクス分野の幅広い知識とスキルを問う検定試験です。上記の2つとは異なり、国家試験ではありませんが、E検定の勉強を行うことで電気エンジニアに必要な技術や知識を効率よく習得でき、取得すれば就職にも有利にはたらくでしょう。

未経験から電気エンジニアになれるのか

求人広告を眺めていると、電気エンジニアの求人のなかには「未経験からチャレンジ可能」というものもあり、未経験であっても電気エンジニアになれることがわかります。どうしても電気エンジニアになりたいというのであれば、とりあえず未経験可で人材を募集している企業に応募してみるのがおすすめです。就職できれば、雇用された会社で電気エンジニアとして必要な教育をしてもらえる可能性があります。

ただし、就職に成功しても失敗しても、電気エンジニアを目指すなら専門知識は必要なので、知識不足を感じる場合には、何らかの方法で知識を習得しなければなりません。

電気エンジニアになるための勉強方法

電気エンジニアになるには、上記のように未経験可で募集している会社に応募するのが手っ取り早いでしょう。ここではそれとは別に、地道に電気エンジニアを目指すための勉強方法を紹介します。

専門のスクールに通う

電気・電子系エンジニアの基礎的な知識は、電気工学科や電子技術科などエレクトロニクス分野が専攻できる専門学校など、専門のスクールに通うことで習得できます。また、再就職したい人々を支援するポリテクセンターにも、電気設備エンジニア科のような電気エンジニアを育てるコースが設置されていることがあります。

通信教育を受講する

電気・電子系エンジニアの基礎的な知識は、通信教育で学ぶことも可能です。第三種電気主任技術者(電験三種)などの資格取得を目指す添削付きの通信講座から、電気回路など知りたい知識を選んで学べるインターネット講座まで、多種多様なものがあります。

独学する

インターネットで学びたい内容を検索していけば、電気関連の基本的な知識はだいたい独学で習得できるはずです。とはいえ、インターネット上には掲載されない情報も多々あるので、足りない知識や最新技術については専門書や専門誌を手に入れて学ぶ必要があります。また、資格試験の問題にチャレンジしてみると、不正解だった箇所が自分の弱点として把握できるのでおすすめです。

まとめ

電気エンジニアとして取得が望まれる国家資格は、特に電気主任技術者と電気工事士です。電気エンジニアにとって重要なスキルには、電気工学や電子工学などの専門的スキルだけでなく、コミュニケーション能力や論理的思考力なども含まれます。

電気エンジニアになるには、未経験から就業可能な会社に応募するのが近道です。リクルートR&Dスタッフィングには電気エンジニアのお仕事事例も豊富に紹介しています。興味のある方は、ぜひ下記のページよりご確認ください。

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記事監修

緒方 誠

株式会社リクルートR&Dスタッフィング HR部 部長
2006年、株式会社プロアウト(現リクルートR&Dスタッフィング)創業に伴い入社。
関東から九州まで幅広い現場でエンジニア派遣によるクライアント支援とスタッフサポートに従事。
首都圏エリア統括を経験後、2017年より現職にて同社採用責任者。
国内採用戦略および海外大学との連携によるグローバル採用など豊富な実績を持つ。
経験者から未経験者まで、一人ひとりの活躍を実現するエンジニア採用を目指している。