半導体エンジニアとは?仕事内容や活かせるスキル

昨今、半導体の需要が高まるにつれて、知識やスキル、経験を備えた半導体エンジニアに注目が集まっており、転職を検討する人が増えている状況です。本記事では、半導体エンジニアの概要や仕事内容の種類、求められるスキルや資格などについて解説します。また、効率的な習得におすすめの勉強方法も紹介するので、参考にしてみてください。

半導体エンジニアとは

近年、私たちの生活に欠かせない電化製品やスマートフォン、自動車などには、AIやIoTが活用されています。また、「仮想現実(VR)」などの技術を用いて、新しいビジネス市場も創出されている状況です。身のまわりにあるさまざまな製品には、「半導体」と呼ばれる小さなチップが組み込まれており、自動化など最先端の技術を支えています。現在、半導体は世界中で争奪戦が起こるほどの品薄状態です。

半導体を製品に組み込むためには、「集積回路(IC)」を適切に設計しなければなりません。その豊富な知識や高度なスキルを備えている職種が「半導体エンジニア」です。

半導体エンジニアの需要が高まっている理由

なぜ、半導体エンジニアが注目を浴びるようになってきたのでしょうか。

前述した通り、現在はAIやIoTなどを活用したデジタル化が、世界中で加速している状況です。さまざまな製品に半導体が必要とされており、それらを設計・開発・運用できるエンジニアが、各方面から求められています。

また、地球環境保護への関心が高まり、いわゆる脱炭素社会を目指す取り組みが活発化していることも一因でしょう。排気ガスが排出されない電気(EV)自動車の市場が賑わえば、当然半導体の需要も高まります。今後も、こうした半導体への需要傾向は続くと考えられるため、豊富な知識と高度なスキルを併せ持つエンジニアが、ますます重要視されています。

半導体エンジニアの仕事

半導体エンジニアは、どのような業務を担っているのか、よくわからない方が多いかもしれません。基本的には、業務内容が異なる「半導体プロセスエンジニア」と「半導体エンジニア」の2種類に分類されます。以下より、それぞれを詳しく解説します。

半導体プロセスエンジニア

まず、プロセスエンジニアは、「プロセス」の言葉に注目してみると、イメージが湧きやすいでしょう。さまざまな製品に組み込む半導体を製造するにあたって、設備や装置などの適切な動作を管理するほか、よりエラーを減らして、多くの半導体を製造できるように、生産性の向上に取り組む業務です。

半導体を組み込んだ製品や管理する装置のデータ分析を行い、問題点を抽出して最適化を図ることもあります。製造にかかるコストや、より高い品質基準を意識しながら、製造に至るまでのプロセスを監視して、改善に導くことが求められます。

半導体エンジニア

一方、半導体エンジニアは半導体を組み込んだ製品において、電気回路を集積した集積回路の設計を担います。電気回路には半導体が大きく関わってくるため、製品全体を設計する役割があると言っても過言ではありません。設計の際には、機能性や安全性などの品質と、コストや効率性といった生産の両面を、しっかり確認することが重要です。

また、半導体に関する知識やスキル、経験をもとに、ユーザーのニーズを叶える新製品を開発するプロジェクトに携わったり、完成した製品の品質管理をチェックしたりすることもあります。

半導体エンジニアとして活躍するためにあるとよいスキル

では、プロセスエンジニアを含めた半導体エンジニアには、基本的にどのようなスキルを備えると、活躍の場を広げられるのでしょうか。以下より、重要なスキルを3つ解説します。

最新情報をキャッチアップするスキル

今や半導体はさまざまな分野で広く用いられ、目まぐるしく技術が刷新される業界にまで成長しています。数ヶ月単位の短期間で、これまでの情報が塗り替えられるため、古い情報に固執したり、アップデートできずにいたりすれば、あっという間に市場で優位に立つことは困難かもしれません。

半導体エンジニアには、技術や市場の動向について、常に最新情報の入手を努めるとともに、それを業務に活かしていく力が必要です。インプットが増えれば、社内で起きるさまざまな課題も、正確かつスピーディーに解決できるようになるでしょう。

英語で情報収集やコミュニケーションができるスキル

外資系IT企業ではもちろん、そうでなくても海外の情報に触れる機会は多いです。特に、世界中で注目されている半導体業界においては、海外で発信される情報や文献が多数そろっており、全体を読めるようになるまでに時間がかかるケースも少なくありません。

また、プロジェクトの中には、海外企業と協力して進めるものもあり、英語力がなければ、スムーズにこなせないおそれが考えられます。ここ数年は新型コロナウイルス感染症の流行により、しばらく往来が滞りがちだったものの、グローバル市場では海外出張や海外駐在はなきにしもあらずです。

したがって、海外から情報を収集したり、海外企業とコミュニケーションを図ったりするのに必要とされる英語力は、身に付けておくとよいでしょう。

専門外の関係者とも円滑にコミュニケーションできるスキル

半導体エンジニアは、ものづくりとして現場の関係者と関わるだけではなく、営業・販売や経営管理などの社内部門、社外の関連企業とも連携して、スケジュール管理やカスタマー対応を進めるシーンもあります。よって、自部門以外の専門的な知識を持たない人とも、上手く説明を交えながら、さまざまな関係者と積極的にコミュニケーションを取っていくことが重要です。

こうした経験を積み重ね、信頼関係を築くことで、何らかの問題が発生した際、スムーズに協力してもらえるため、解決への糸口が見つけやすくなるでしょう。

半導体エンジニア関連の資格

では、半導体エンジニアとしてのスキルを、客観的に証明できる資格には、どのようなものがあるでしょうか。以下より、おすすめの資格を5つ紹介します。

半導体技術者検定

元々、「一般社団法人 パワーデバイス・イネーブリング協会(PDEA)」は、2014年から半導体に関する知識を測る検定試験として、「半導体テスト技術者検定」を実施してきました。しかし、現在は半導体業界のみならず、金融や医療、物流業界など、あらゆる業界において半導体は活かされています。これを機に、業界問わず半導体のスキル育成に役立つ資格として、2019年からは「半導体技術者検定(SECC:Semiconductor Engineer Career Certification)」に名称を変更し実施しています。

レベルには3等級あり、入門的な位置付けの「エレクトロニクス3級」、若手から中堅エンジニアレベルの「エレクトロニクス2級」、中堅から指導的な役割を持つベテランエンジニアレベルの「エレクトロニクス1級」から、選択できる点が特徴です。

受検にあたる具体的な対象者としては、半導体メーカーの研究・開発者や製造に携わる人、半導体商社における営業に関わる人、半導体ユーザーにおける製品開発を担う人などが想定されるでしょう。つまり、半導体の作り手と使い手の両面から、必要な知識を持っていると客観的に判断してもらえるはずです。特に、1級まで取得できれば、多様な分野の技術を横断的に身に付けた上で、課題を最適化し解決できる人材であることを評価してもらえる、大きなメリットがあります。

参照(外部リンク):一般社団法人 パワーデバイス・イネーブリング協会「半導体技術者検定」

ディジタル技術検定

1972年に、「ラジオ・音響技能検定」からコンピュータに関する技術範囲を独立させて創設したものが、「ディジタル技術検定」です。文部科学省後援の「国際文化カレッジ」が主催しており、主にメーカーや工業系の学生を中心に知名度が高く、歴史が長い分、信頼性がある検定と考えられます。

出題範囲は、情報処理から制御に至るまでの広範囲にわたり、レベルは初歩的な4級から、実務指導が可能な1級までの4段階があります。特に、1級と2級には「情報部門」と「制御部門」に分類されているため、より細やかに専門性を絞れる点が特徴です。

さまざまな電子機器においては、組み込んだコンピュータに膨大な情報を処理させるなど、制御を目的に幅広く応用が行われています。このような資格を取得することにより、ディジタル技術の知識を深く習得していることを評価されやすくなるでしょう。

参照(外部リンク):公益財団法人 国際文化カレッジ ディジタル技術検定部「ディジタル技術検定」

半導体製品製造技能士

厚生労働省が認定している国家資格である「半導体製品製造技能士」を取得すると、半導体に関する業務において、活躍の場がさらに広がります。半導体チップの製造以外にも、ユーザーへの営業や品質管理などの関連業務でも役立つかもしれません。

ただ、特級と1級を受検する際は、実務経験が問われるため、事前に確認しておかなければなりません。また、2級は学歴によって条件が異なるものの、基本的にはある程度の経験を積んでおかなければならないケースが多く要注意です。

この試験は、「都道府県職業能力開発協会」の管轄であるため、詳しくは各都道府県の職業能力開発協会に問い合わせるとよいでしょう。

参照(外部リンク):中央職業能力開発協会「都道府県職業能力開発協会」

CAD利用技術者試験

「CAD利用技術者試験」は、「一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP)」が主催している資格試験です。「CAD」とは「Computer Aided Design」の略で、主に土木建築業やメーカーの開発・設計で用いられている、製図(設計図面作成)に関するスキルを指します。平面図面作成が中心の「2次元CAD利用技術者試験」と、3Dなどの立体的なデータを扱う「3次元CAD利用技術者試験」があり、CADを学んでいる学生から、実践的にCADを用いた業務に携わっている社会人まで、幅広く受験しています。

半導体エンジニアも製品の設計に携わるため、この資格を保有していると、客観的にスキルを評価してもらえるとともに、転職試験でも有利に働くでしょう。2次元・3次元の双方とも、2級までは誰でも受験できるので、チャレンジしてみることをおすすめします。

参照(外部リンク):一般社団法人コンピュータ教育振興協会「CAD利用技術者試験」

機械保全技能検定

「機械保全技能検定」は、工場でのメンテナンスに必要なスキルを測るため、「公益社団法人日本プラントメンテナンス協会(JIPM)」が実施している国家資格試験です。設備の点検や不具合の修理は、どの工場でも求められます。半導体エンジニアにとっても、現場でのメンテナンス作業に関する知識を備えておくことは欠かせません。リスクマネジメントの観点からも、この資格の取得が望ましいです。

試験のレベルは3級から特級まであり、2級より上には過去も含め、機械保全に関わった実務経験による受験資格が設けられます。例えば、2級では「実務経験2年以上」、1級では「実務経験7年以上」、特級では「1級合格後5年以上の実務経験を積むこと」が必須であるため、受験前に条件を満たしているかどうか、必ず確認しておきましょう。

特級では、「機械系保全作業」「電気系保全作業」「設備診断作業」の3つのジャンルが総合的に問われます。一方、それ以外の級では選択制なので、段階的に習得していける点が魅力です。

参照(外部リンク):公益社団法人日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定」

半導体エンジニアとして働くための勉強方法

半導体エンジニアへの転職を考えるなら、さまざまな知識やスキルを習得しなければなりません。以下より、おすすめの効果的な勉強方法を紹介します。

関連書籍から勉強する

スタンダードな勉強方法としては、半導体業界で必要な知識などをまとめた書籍が挙げられるでしょう。現場で活躍するために欠かせないスキルは広範囲に及ぶため、いきなりすべてを網羅することは困難です。

例えば、前述した「半導体技術者検定」では、入門的な位置付けの3級から実施されています。この関連書籍を本屋やネットショップから入手すれば、半導体デバイスに関する基礎的な勉強がはかどるでしょう。また、半導体技術者検定の公式サイトでも、テキストや問題集などが紹介されています。初心者にもわかりやすく、丁寧な解説もついているので、繰り返し勉強すれば、おのずと合格に近づくはずです。

参照(外部リンク):公式テキスト|半導体技術者検定

英語の文献を読み解く訓練をする

半導体市場は日本のみならず、全世界で活発に取引されています。海外から発信された文献や資料も多く、半導体エンジニアにとって、英語力は不可欠なスキルと言っても過言ではありません。

もし、半導体エンジニアとして晴れて転職し、その後はキャリアアップを目指すとしても、英語が必要なシーンは必ず出てくるため、早めに英語力を身に付けていくことがおすすめです。

ただ、いきなりネイティブな読み書きや会話は困難なので、やさしめの英語で書かれた文献を読んでみたり、自分の意見を英語で書いて表現してみたりと、徐々にステップアップしていくとよいでしょう。

まとめ

現在、私たちの身のまわりにある製品の多くで半導体が用いられており、IoTやAIなどの技術を支えています。また、需要が高まるにつれ、半導体に関する知識やスキルを備えた、半導体エンジニアにも注目が集まっています。半導体エンジニアへの転職には、さまざまな知識を得たり、スキルを磨いたりすることが大切です。特に、資格は客観的に評価してもらいやすいため、基礎的なレベルから積極的にチャレンジしてみるとよいでしょう。

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記事監修

緒方 誠

株式会社リクルートR&Dスタッフィング HR部 部長
2006年、株式会社プロアウト(現リクルートR&Dスタッフィング)創業に伴い入社。
関東から九州まで幅広い現場でエンジニア派遣によるクライアント支援とスタッフサポートに従事。
首都圏エリア統括を経験後、2017年より現職にて同社採用責任者。
国内採用戦略および海外大学との連携によるグローバル採用など豊富な実績を持つ。
経験者から未経験者まで、一人ひとりの活躍を実現するエンジニア採用を目指している。