機械系エンジニアとは? 役立つ資格や将来性、仕事内容などを解説

分野が多岐にわたるエンジニアのなかでも、近年にわかに需要が高まりつつあるのが機械系エンジニアです。将来性があるといわれている機械系エンジニアへの転職を検討している方も少なくないでしょう。本記事では、機械系エンジニアの概要や仕事内容、将来性、役立つ資格などを解説します。

機械系エンジニアとは? 役立つ資格や将来性、仕事内容などを解説-01

機械系エンジニアの仕事内容とは

機械系エンジニアは、ものづくりにおけるすべてのプロセスに関わる技術者です。個人が使用する機器から工場のような大規模設備まで、さまざまな機械の企画立案や設計に携わります。

企画立案・構想設計

機械系エンジニアは、機械の開発や製造におけるあらゆる工程に携わります。
まず、その最初の段階として、企画立案が挙げられます。自社の商品開発部やクライアントがどのような機械を求めているのか、どういった課題を解決したいのかを企画に落としこんでいく作業です。

企画立案では、機械にどのような機能を盛り込むのか、どういった性能を持たせるのかといった仕様を決定します。企画ができあがったら、その機械を形にするために必要な素材、技術などを決める構想設計のプロセスへと移行します。

なお、企画立案の段階で市場や消費者のニーズなどの調査を行うケースも多く見受けられます。このような調査に関しては、機械系エンジニアではなく、営業担当やコンサルタントなどが担当することがほとんどです。

ただし、ニーズを正しく設計に反映するためにも、調査の方法や内容についての理解力が求められます。この段階で設計が参加する場合には、製造までの全体工程を見通してクライアントに意見できる技術力やコミュニケーション能力を必要とします。

基本設計・レビュー

構想設計で大まかなイメージができあがったら、実際にどのような形にするのかを決めていきます。機械の横幅や高さはどれくらいにするのか、組み立てに必要な部品の大きさはどうするのかなど、詳細な寸法を決定していくプロセスです。

基本設計では、一般的にCADが用いられます。CADは、見やすく繊細な図面をスピーディーに作成できる製図用のツールです。製造業向けのCADには、プロダクト設計に向いた処理機能が実装されており、設計に関わるエンジニアはこれらの機能を使いこなすことが求められます。

基本設計が完了したら、レビューと評価を行います。機能性だけでなく安全性や耐久性、操作性などがクライアントの要望を満たす水準に達しているかなどをチェックします。もし問題がある場合には、該当箇所を修正して再度レビューと評価を繰り返し、設計の精度を高めていきます。

詳細設計

レビューと評価を繰り返してブラッシュアップした基本設計に基づき、さらに詳細な設計を進めます。詳細設計は、生産の安定性を担保するために必要なプロセスです。

機械の安全性や機能性といった品質を考慮し、図面に各部品の寸法公差や幾何公差を書き込みます。
公差とは、基準となる寸法に対して誤差をどの程度許容できるのかを示す数値です。設計図と製造品の寸法や位置関係を比較して誤差を計測し、製造品が許容範囲内であれば設計時に想定した品質が保てることを意味します。

この設計が甘いと、図面通りに製造した品物が欠陥を持ったり、品質を保てているのに不良品として扱われてしまったりといった無駄が生じます。詳細設計は機械を構成する部品の精度に大きく関わってくるため、ものづくりにおいて重要なプロセスです。

生産設計

生産設計は、量産体制へシフトする前段階の設計プロセスです。詳細設計が終わったら、最終的に採用する図面を作成し、用いる部品や素材、必要な技術などを決めていきます。

この段階で試作品であるプロトタイプを作成します。設計通りに製造しても、必ずしも想定通りの機能を発揮できるとは限りません。プロトタイプを用いて性能評価試験を実施し、想定通りの結果を出すことができれば、量産体制へと移行します。

なお、機械系エンジニアは設計だけでなく、完成した機械のメンテナンスや、設置した機械の保守、運用などにも携わります。このような業務でも、問題発見や解決のために設計の知識が求められます。

機械系エンジニアの将来性がある理由

ここからは、機械系エンジニアの将来性について、その理由とともにご紹介します。

機械系エンジニアの需要は広がっている

近年は円安の影響で、日本からの輸出を増やそうと製造業が勢いづいています。
それに伴って機械設備の設計や保守運用の需要が高まっているのに対し、国内における技術者の数は減少傾向にあります。つまり、需要に供給が追いついておらず、優れた技術者は引く手あまたの状況です。

株式会社メイテックネクストによるエンジニア求人動向の調査では、機械系エンジニアの需要の高さが見て取れます。エンジニア全体で見ると、求人数の少なかった2020年頃と比較して2022年7月時点の求人件数は1.5倍以上です。同調査では、なかでも半導体やEV車のニーズ拡大に伴って、機械系設計職の求人が好調であると結論づけています。

参考・出典(外部リンク):エンジニア求人動向のお知らせ 2020年6月を底に、エンジニア求人全体が増加傾向に 機械系設計職の求人数が好調(メイテックネクスト)

日本製の製品は評価が高い

日本は古くからものづくりの国といわれてきた歴史があります。例えば、日本車はデザインや機能性などが世界各国で高く評価されており、アメリカや中東諸国、インド、ハンガリー、オーストラリアなどあらゆる国々で販売されています。

自動車だけに限った話ではなく、産業用ロボットなどの最新技術においても日本製の機械は機能や安全性の高さが海外で高く評価されています。
このように、日本の機械は国内外から常に一定の需要があるため、機械系エンジニアの需要もまた安定しており、将来性があると考えられます。

機械系エンジニアに役立つ3つの資格

機械系エンジニアとして活躍するうえで必須の資格はありません。ただ、取得しておくと実務や転職に役立つ資格はいくつかあります。代表的なものとしては、技術士や機械設計技術者試験、CAD利用技術者試験などです。

技術士

技術士は、公益社団法人日本技術士会が主催する資格試験です。科学技術の応用力や知識を認定する国家資格であり、機械部門に合格すれば、機械系エンジニアとしてたしかな知識とスキルを有する証明となります。

試験は第二次まであり、第一次試験では大学のエンジニアリング課程を卒業する程度の知識を求められます。また、第二次試験は受験資格として最大で7年の実務経験を経る必要があることから経歴も求められます。

国家資格のため難易度は高く、しっかりと勉強し試験に臨まなくてはなりません。一次試験であれば、市販の参考書や過去問を用いて学べば独学でも合格は可能です。ただ、試験は年に一度しか実施されないため、確実な合格を目指すのであれば講座やスクールでの学習も検討してみるとよいでしょう。

参考・出典(外部リンク):試験・登録情報|公益社団法人 日本技術士会

機械設計技術者試験

機械設計技術者試験は、機械設計に携わる技術者のスキルを認定する試験です。資格の取得により機械系エンジニアに求められる設計技術を有することが証明できます。また、資格取得に向けた学習の過程で、機械設計の基本や管理者としての知識を得ることにもつながります。

試験は難易度別に1~3級まで設定されています。3級は入門用の試験であり、出題範囲は基礎的で技術者になりたてでも十分合格を目指せる難易度です。2級はさらに応用・総合的な知識を必要とし、1級は実技や小論文といった課題もあり、高い専門性が求められます。
なお、3級には特に受験資格はありませんが、1~2級の受験には最大で10または7年の実務経験を必要とします。

勉強方法は、独学であればテキストや過去問題集を利用するとよいでしょう。試験を実施している一般社団法人日本機械設計工業会より公式テキストが市販されており、過去問は同団体の公式HPからダウンロードできます。

参考・出典(外部リンク):機械設計技術者試験|(一社)日本機械設計工業会

CAD利用技術者試験

CAD利用技術者試験は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が主催する試験です。
機械の設計が主な業務となる機械系エンジニアにとって、CADを扱うスキルは必須といっても過言ではありません。現在ではあらゆる設計プロセスにおいてCADを使用するため、利用できるスキルを有していることを証明できれば就職に大きく役立ちます。

2次元CAD利用技術者と3次元CAD利用技術者の2つがあり、前者は基礎と2級、1級、後者は2級、準1級、1級とレベルが設けられています。2次元CADの1級についてはさらに機械・建築・トレースの3分野に分かれており、いずれかを選択します。低難易度のものでも3か月程度の就学やCADを利用する業務に従事できる能力が求められ、1級では1年以上の実務や就学経験があることを想定しています。
公式テキストが市販されているほか、過去問題集も販売されているので、難易度によっては独学でも十分合格できるでしょう。

参考・出典(外部リンク):CAD利用技術者試験 – ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会

機械系エンジニアに必要な知識・スキル

機械系エンジニアとして活躍するには、さまざまな知識やスキルが必要です。特に力学については設計を考えるうえで大前提の知識となるため、押さえておきましょう。

4力学

力学とは物理学におけるひとつの分野であり、物体に働く力や、それによって発生する運動との関係を研究する学問です。機械力学・流体力学・熱力学・材料力学の4つの分野に分けられ、いずれも機械系エンジニアとして活躍するのに必須の知識であるため、それぞれを正しく理解しておかねばなりません。

機械力学

機械力学とは、4大力学のなかでも土台となる知識であり、機械が動くことによって発生する力を研究する学問です。機械力学に関する知識がないと、機械部品にどのような力が加わるのかを考慮した設計ができず、その結果部品が破損する、といったトラブルを招きかねません。
また、機械力学には、静力学と動力学の2つがあります。前者は、静止した物体のつり合いを、後者は物体の運動による力の作用を扱います。

流体力学

流体力学とは、水や空気などの流体が持つ性質や作用する力を研究する学問です。
流体力学が関係する機械としては流体機械があり、流体をエネルギーに変換するタービンや水車、ポンプなどが該当します。
ほかにも、例えば冷却装置を設計する際には、流体力学をもとに冷却効率を考えなくてはなりません。冷却に用いる流体の流量や速度などを計算し、もっとも効率よく冷やせるよう設計します。
また、航空機の設計においても、流体力学の知識を用いて空気抵抗や浮力を導き出します。

熱力学

熱力学とは、物体間の熱の移動や運動への作用を扱う学問です。熱エネルギーはさまざまな機械に用いられ、自動車エンジンなどの設計に必要です。
それ以外にも、タービンによる発電や機械が動作する際の発熱など、動力を用いるあらゆる機械設計に切り離せない分野です。

材料力学

材料力学は、構造体や部品にかかる負荷によって生じる変形や破壊について研究する学問です。金属をはじめとした工業材料の強度をもとに機械の安全性などを予想し、実際に試験した結果を検証する際にも必要とされます。
ある材料を使用する場合にどの程度の動作を保証できるか、また品質を満たすためにどの材料を使用するべきかを決定するため、多くの分野で求められる知識です。

機械系エンジニアにおすすめの勉強方法

機械系エンジニアへの転職には、図面の読み書きやCADの利用、力学に関する基礎的な知識は不可欠です。
図面の読み書きを習得するためには、実際の図面を見て勉強に取り組むのがおすすめです。機械の生産に図面は必須であり、まずは図面の指示内容を理解できないと話になりません。可能であれば実際の現場で使用されている図面を見て学習するとよいでしょう。
機械設計に関する図面の参考書を購入するのもひとつの手です。図面をどのように見ればよいのか、どう描けばよいのかを詳しく解説した本も市販されています。

また、図面を扱う際に必須のスキルとなる、CADを扱う力も養う必要があります。CAD関連の書籍は数多く出版されているため、本で知識を得ながら実際にCADを操作して図面を描けるよう基本操作を身につけるのがよいでしょう。
なお、企業で使われているCADの多くは有料ソフトですが、無料で利用できるものがオンラインで入手できるため、まずはそれでトレーニングしてみるのもおすすめです。

設計の手段を身に着けることに加えて、4力学に関する学習も必要です。業務に用いる知識の多くは工学系の大学を卒業するレベルを求められます。教科書や参考書で包括的に力学の概念を学ぶことに加えて、どのようにその知識が利用されているのか、応用的な活用法についても知っておきましょう。

これらのスキルや知識については、資格取得のための勉強でも身に着けられます。希望する分野の就職先が求める資格を確認し、不足を補えるよう資格取得を目指すとよいでしょう。

機械系エンジニアに向いている人の特徴

これから機械系エンジニアを目指す際には、自身が向いているかを知ることも大切です。向いている人の特徴としては、以下の4つが挙げられます。

機械を触り続けても抵抗がない

機械設計では、ただCADを操作するだけでなく実際にプロトタイプを作成してレビューを行います。何度も分解や組み立てを繰り返しつつ問題点の抽出や改善を行うため、機械に触り続けることに抵抗がある、という人は長続きしないおそれがあります。
工場機械などの設計では実際に現地で組み立てや動作の確認に立ち会うこともあります。このような機械の保守運用に携わるエンジニアは、現地への長期出張となる場合もあり、工場勤務に抵抗がないことも条件として挙げられます。

必要な知識や技術の習得に貪欲

機械技術の進歩は目まぐるしく、日々新たなものが開発されています。そのため、実績を積んだとしても古くなった技術は必要とされなくなるおそれがあります。新たな知識や技術を積極的に習得しようとする意欲があれば、常に必要とされる技術を身に着け続けることができます。

地道な作業にコツコツと取り組める

機械系エンジニアは決して華々しいものではなく、細かい作業を延々と繰り返す地味な仕事です。さまざまな問題を解消し、要求を満たす設計ができあがるまでには地道な努力が求められます。

柔軟な発想力や想像力がある

設計では、実際に頭のなかで製品のイメージを組み立てる必要があります。想像力は経験で補強される部分もありますが、柔軟性がなければ得た知識を有効活用することは難しいでしょう。

まとめ

現在は機械系エンジニアの需要が高まりつつある一方で、人材が不足している傾向にあり、活躍できる場は数多く存在します。機械系エンジニアへの転職を考えているのなら、4力学やCADの操作などを学び、資格の取得も視野に入れて行動を起こしてみましょう。
エンジニア派遣専門のリクルートR&Dスタッフィングであれば、機械系エンジニアとしての案件もスムーズに提案可能です。転職希望の方は、エントリーからの応募をお待ちしております。

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記事監修

緒方 誠

株式会社リクルートR&Dスタッフィング HR部 部長
2006年、株式会社プロアウト(現リクルートR&Dスタッフィング)創業に伴い入社。
関東から九州まで幅広い現場でエンジニア派遣によるクライアント支援とスタッフサポートに従事。
首都圏エリア統括を経験後、2017年より現職にて同社採用責任者。
国内採用戦略および海外大学との連携によるグローバル採用など豊富な実績を持つ。
経験者から未経験者まで、一人ひとりの活躍を実現するエンジニア採用を目指している。