アナログ回路設計とは? 仕事内容やスキル、やりがいを解説

アナログ回路設計とは、デジタル技術が発展した現在、IoT機器などの電子機器や自動運転システム、産業機器などには欠かせない技術です。本記事では、アナログ回路とデジタル回路の違いやアナログ回路設計者の仕事内容、さらにアナログ回路設計者になることで得られるやりがい、必要な知識・スキルについて解説しています。

アナログ回路設計とは? 仕事内容やスキル、やりがいを解説

アナログ回路設計とは?

アナログ回路設計とは、多くの電子機器に用いられる電子回路のなかでもアナログ回路を設計することです。AIやIoT活用の場が広がり、電気自動車や自動運転システムも普及してきている昨今、回路設計者の需要は急速に高まっています。なかでもアナログ回路設計者の需要が極めて高く、デジタル化が進めば進むほど、その傾向は続くと見られています。

そもそもアナログ回路とは、電気信号および電力の波形を自在に操るために必要な電子回路のことです。そして電子回路は、電源や素子、配線などを組み合わせ、受動素子・能動素子によって構成されています。電子回路であるアナログ回路は、電圧の変化を連続的に捉えられることから、多くの情報を短時間で伝えられるというメリットがあります。

このアナログ回路を設計するのがアナログ回路設計者であり、電子工学や情報工学などの知識を必要とする専門性の高い職種です。今後も家電やIoT機器、自動車、産業機器など幅広い分野の機器開発で欠かせない役割を担います。

アナログ回路とデジタル回路の違い

電子回路設計には、アナログ回路設計のほかにデジタル回路設計があります。この2つの回路は対比関係にあり、扱う電気信号の性質も違います。

アナログ回路の「アナログ」という部分に焦点を当てると、主に自然界の光や熱、音などの情報は連続的な値で変化し、それをアナログと呼びます。そのためアナログ回路とは、これらの自然現象や人間の五感で感じる連続したアナログ信号を取り扱う電子信号ということです。一方でデジタル回路の「デジタル」とは、とびとびに変化する離散的な数値の表現です。そのため、表現できる値が限定され、ほかの値は意味を持たないとされます。そうしたことから、デジタル回路は0と1、もしくはオンとオフといった電気信号のみを扱う電子回路となります。

これら2つの回路は共存しており、デジタル回路が動作するためにはアナログ回路が重要な役割を果たしています。具体的には、デジタル回路は0と1、もしくはオンとオフの2つの信号を用いて処理を行いますが、電気や電波、音などの物理的な動きをアナログ回路が調整し、デジタル信号に変換する役割です。

一方で、センサ回路など、デジタル回路に置き換えできない機能も存在します。アナログ回路にはその機能を実現できるという面があり、そこはアナログ回路の大きなメリットです。しかし、昨今開発されている電子機器では、デジタル回路およびアナログ回路は一緒に搭載されていることが一般的です。そのため、アナログ・デジタル回路のどちらかの設計者を目指すとしても、双方の知識が必要になるでしょう。

アナログ回路設計の仕事内容

アナログ回路設計は、前述のようにデジタル回路を動作させるための重要な役割を担います。そのアナログ回路を設計することが、アナログ回路設計者の仕事です。アナログ回路設計者の主な仕事内容には、打ち合わせや機能的な設計だけでなく、電子機器に組み込むために行うレイアウト設計なども含まれます。また、シミュレーションやそのフィードバックなども必要です。アナログ回路設計における具体的な仕事内容は以下の通りです。

製品設計者との打ち合わせ

まずは、どのような機械を作るのかを決める製品設計者との打ち合わせを行います。作成された仕様書を確認しながら、動かし方を考える工程です。その機械に必要となる回路の規模および性能、コスト、スケジュールなどについて打ち合わせを行い、必要な部品の選定も実施します。電子回路基板には、情報を処理するための半導体が組み込まれているため、それを中心とする回路が目的通りに動くように構造を考えていきます。その後、機能ごとに細かく回路ブロックを分け、ブロック間でやり取りされる信号の仕様を定義しておきます。そうすることで、その後の回路設計が進めやすくなります。

回路の設計

ブロック分けされた詳細な回路を、目的通りに動作するよう設計していきます。具体的には、回路を構成するオペアンプやトランジスタ、コンデンサ、抵抗などの電子部品を組み合わせたり、CADを用いた設計や製図などを行ったりする作業です。また、近年ではデジタル回路設計と同様にHDL(ハードウェア記述言語)と呼ばれるプログラミングを用いたアナログ回路設計も行われています。

回路設計後はレイアウト設計を行います。アナログ回路では、ノイズが発生しないようにするため、配線の長さおよび幅、部品の位置も重要です。目的にあったものを実現するために、調整用の部品も利用しながらレイアウトします。

シミュレーション

次に行うのは、アナログ電子回路が問題なく動作するかを確認するためのシミュレーションです。このフェーズは、回路シミュレーターを用いて行います。この回路シミュレーターには、アメリカの半導体メーカーAnalog Devicesが無料で提供する「LTspice」というシミュレーション・ソフトウェアが多く使われています。チュートリアルも豊富で、トレーニング環境も整っていることが特長です。このシミュレーションによって目的に沿っていないことが判明した場合、改善のための修正を行います。

フィードバック

シミュレーションにおいて問題なければ、試作を行います。試作が正常に動作するかを確認しますが、製品の特性によって温度・静電気・ノイズなどの試験も行い評価します。これは複数回繰り返し行われることがほとんどです。

アナログ回路設計のやりがい

アナログ回路設計のやりがい

アナログ回路設計者は、近年のIT需要により活躍の場が広がっています。そのなかで、多くのアナログ回路設計者が見出せる「やりがい」とは一体どのようなことが挙げられるのでしょうか。ここでは、アナログ回路設計におけるやりがいや、仕事の厳しさについてもまとめています。

自身の成果を見られる

アナログ回路は、世の中に出回っているあらゆる電子機器に用いられていることから、自身が開発に携わった製品を街中で確認できるかもしれません。特に一般向けの製品である場合、人々の生活に役立っていることをその目で見ることが可能です。自身の成果を肌で感じられ、達成感や満足感を得られるはずです。

最新技術に触れられる

回路設計という分野自体、技術の発展が目覚ましく、常に技術の最先端に触れられるということも大きな魅力です。また、競合に負けない製品を生み出すには、高性能な回路設計だけでなく、常に最新技術や知識を身につけておく必要があります。それは簡単なことではありませんが、エンジニアとしても大きく成長できる糧になります。

チームでものを作る喜びを味わえる

アナログ回路設計はひとりで行う仕事ではありません。プロジェクトチームを作り、メンバーとコミュニケーションをとりつつ協力してひとつの製品を完成させます。製品設計者やソフトウェアチームなど、役割の違う他のメンバーと連携し、同じ目標に向かって行う仕事はチームでものを作る喜びを存分に味わえるはずです。

やりがいの一方で仕事の厳しさも

アナログ回路設計は、技術の専門性が高く、突き詰めれば突き詰めるほど、技術の幅が狭まりやすいといった一面があります。そのため、幅広い技術の習得が困難になるケースも多く、そうなるとモチベーションも維持しにくくなります。加えて、高い技術を要し重要度の高い業務であることから、プレッシャーが負担になってしまう可能性もあります。その分、成果が上がったときには達成感を得やすいですが、責任と向き合わなければならないという側面もあります。

アナログ回路設計に向いている人

アナログ回路設計に向いている人の大前提として、電子機器がどのように動くのか、もしくは電子回路がどうなっているのかということに興味・関心を持っていることが重要です。なぜなら、アナログ回路設計は思い通りに動作しないなどのトラブルにぶつかることも多く、興味・関心を持っていないと、モチベーションが一気に下がってしまう可能性があるからです。

興味・関心を持っていると、仕様書や設計図を見るだけで楽しくなるという人もいます。上手く動作しないというトラブルも、楽しみながら改善に向けた努力を行える可能性があります。また、課題解決に面白さを見出せる人も向いている職種です。さらに、プロジェクトチームとして他のチームメンバーと協力しながらひとつの製品を作り上げることから、コミュニケーション能力が高いこともポイントになります。

顧アナログ回路設計者として活躍するのにあるといいスキルや資格

顧アナログ回路設計者として活躍するのにあるといいスキルや資格

アナログ回路設計者として活躍するには、専門的な知識やスキルが必要です。では、アナログ回路設計者が持っているとよい資格や、具体的にどのような知見を有していればよいのでしょうか。

EMC設計技術者資格

「EMC設計技術者資格」は、電気機器や電子回路およびプリント基板を設計する技術者のスキルを認証するための資格です。EMCとは「Electromagnetic Compatibility」の頭文字を取った言葉で、「電磁両立性」と定義されています。つまり、機器は電磁的妨害源にならず、また電磁的な干渉も受けないようにする必要があり、そのうえで干渉を受けても正常に動作するように設計・製造されなければならないという概念のことです。この概念に従って回路設計を行うことを、EMC設計、もしくはEMC対応設計と呼びます。

このEMC設計技術者資格では、EMC設計能力が問われます。EMC設計能力は実際の業務に役立つため、アナログ回路設計者は目指すべき資格です。難易度が比較的高く、受験資格は学士以上、または実務経験5年以上が必要ですが、スキルアップのためにも取得することをおすすめします。

また、「情報処理技術者試験」や「ディジタル技術検定」、「CAD利用技術者試験」などの資格もおすすめです。

参照(外部リンク):EMC設計技術者試験

専門的な分野の知識

アナログ回路設計になるには、専門的な知識を要します。アナログ回路の理解には、一般的に電子工学および情報工学の専門知識に加え、トランジスタの仕組みといったアナログ電子回路の基本も押さえておかなければなりません。また、機械そのものや電気回路、制御工学、さらにはソフトウェアの知識も必要になります。

アナログ電子回路設計者を目指す上で必ず押さえておきたい知識は「オペアンプ」です。オペアンプとは、「Operational Amplifier」の略語で演算増幅器のことです。微弱な電気信号を増幅でき、さらに入力信号からノイズを除去できる集積回路で、アナログ回路では欠かせないものとなっています。また、ほとんどの応用回路で使用される重要度の高いものです。

これらの知識に加え、回路設計に用いられるCAD(Computer Aided Design)やシミュレーターの操作技術があることで大きなアドバンテージとなります。

論理的思考力

アナログ回路だけに限らず、電子回路設計では複雑な部品を組み合わせ、目的に沿った機能を実現させなければなりません。どうすれば実現できるのか、どのような手順や手法を行うべきかを考える必要があります。また、起こり得る問題に対しても同様です。これらのことを論理的に考えられる思考力が、電子回路設計者には必要不可欠でしょう。

また、作業効率向上や費用削減などの目的に向けた、発想力も重要なスキルのひとつです。そして、最新技術に関する情報収集能力やチームでプロジェクトを円滑に進めるためのコミュニケーション能力もあると、大きな武器となるでしょう。

まとめ

アナログ回路設計は、身近な家電やIoT機器だけでなく、自動車分野や産業分野における機器開発に欠かせない仕事です。そのため、今後もデジタル化推進の観点から需要は高まる一方であり、必要な技術や知識を身につけることで、幅広い分野で活躍できます。アナログ回路設計者として活躍したい場合は、論理的思考力や発想力、コミュニケーション能力などのスキルに加え、知識や技術の証明にもなる「EMC設計技術者資格」などの資格があると大きなアドバンテージになります。

リクルートR&Dスタッフィングは、アナログ回路設計者を含めたエンジニアのお仕事事例が豊富に揃っています。エンジニアとしてキャリアアップを目指している場合には、ぜひエントリーしてみてください。

>>リクルートR&Dスタッフィングの詳しい情報はこちら
>>リクルートR&Dスタッフィングの募集要項ページはこちら

記事監修

緒方 誠

株式会社リクルートR&Dスタッフィング HR部 部長
2006年、株式会社プロアウト(現リクルートR&Dスタッフィング)創業に伴い入社。
関東から九州まで幅広い現場でエンジニア派遣によるクライアント支援とスタッフサポートに従事。
首都圏エリア統括を経験後、2017年より現職にて同社採用責任者。
国内採用戦略および海外大学との連携によるグローバル採用など豊富な実績を持つ。
経験者から未経験者まで、一人ひとりの活躍を実現するエンジニア採用を目指している。